【 <最高裁はどうしても小沢氏を刑事被告人にしたかった>

【 <最高裁はどうしても小沢氏を刑事被告人にしたかった>
  だから、架空議決という手を考えた。
  うまく進んでいたのに、小沢氏が代表選に出馬し、勝ちそうになってしまった。
  そこで、最高裁と菅陣営は起訴議決を9月14日の代表選開票前に早めた。
架空議決だからできるのだ。
  起訴議決発表以降多くの疑惑が噴出したが、政権与党と最高裁は権力に任せて騙し通そうとしている。
 これが、『最高裁の罠』だ。  】
【】最高裁小沢総理誕生の可能性が出てきたので、架空起訴議決日を代表選前に早めた! (一市民が斬る!!)   http://civilopinions.main.jp/2013/02/215_1.html
    2013年2月15日 一市民が斬る!! [Civil Opinions Blog]
 <最高裁は小沢検審起訴議決日を何故早めたのか>
 最高裁検審関係者を通じ「10月末議決予定」とリークしたのに、何故9月14日に議決を早めたのか。
 借りのある民主党仙谷氏らに要請されたとしても、9月14日の議決は怪しまれるばかりだ。
  何故菅陣営の要請を了承したのか疑問の残るところだ。
  そう考えているうちに、はたと気づいた。
  そうだ、最高裁も代表選前に起訴議決しておく必要があったのだ。
  もし小沢氏が総理になったら、その後は架空議決できない。
  小沢氏が総理になった後起訴議決をしたら、小沢氏は総理大臣権限で審査会議の内情を確認することができる。 ちょっと確認するだけで、最高裁イカサマ架空議決はばれてしまう。
  だから、最高裁は小沢氏が総理になった場合に備えて、代表選前に議決したことにしておく必要があった。

 <最高裁の手の内を読む>
  最高裁は、最初から架空議決で起訴する方針を立てていた。
  そのため、2009年4月に職員2人の東京第五検察審査会事務局を新設している。
  申し立てを受けてから、事務局は2010年10月末起訴議決の予定で、審査員日当交通費請求書などの創作を続けていた。
  そして、4月27日に1回目の架空起訴議決を発表した。
  メディアの小沢バッシングのせいで、架空議決など誰も気づかなかった。
  この時点で、小沢氏は代表選に出馬するなど考えてなかったと思う。
  メディアも小沢バッシングをし続け、検察審査会の2回目議決がでるまで代表選に出るべきでないと牽制していた。
  だが、菅政権での参院選惨敗などで、民主党内に小沢氏出馬の要請が高まり、8月末小沢氏がついに出馬することになった。
  代表選当初は、メディアの応援をバックに、菅氏断然有利の展開だった。
  ところが、遊説やテレビ出演などでの小沢氏の露出が多くなると、菅氏と差がどん どん縮まっていった。
  代表選数日前になると、もしかして小沢氏が勝つのではないかという状況になった。
  それでも、9月8日に、最高裁検審関係者を通じ「審査補助員がやっと決まった。 これから審査が本格化し、議決が10月末となる」とリークしていた。
  このリークの直後だと思う。菅派が動いた。
  菅派幹部は「小沢氏が勝つかもしれない。9月14日に議決したことにしてほしい。 小沢氏が勝っても起訴議決されたことで小沢氏を追い落とせる」と最高裁に要請したのではないか。
  最高裁も、「小沢氏がもし総理になったら、小沢氏を架空議決することはできない。代表選前に議決したことにしておこう」と考えたのだろう。
 こうして、9月14日の起訴議決が決まった。
 ところが、菅陣営が「小沢は起訴議決されるらしい」と情報を流したのが効いたのか、9月14日の代表選で菅氏が勝ってしまった。
 「9月14日議決」のカードは不要になった。
 ただ、この情報は一部の人に流れているので、無にするわけにはいかない。
 そこで、「議決書への署名が間に合わなかった」などの理由を付けて、発表の日を
10月4日に延ばした。
 さらに、議決が早まった言い訳として「審査員は9月に入って平日頻繁に集まった」などと嘘を朝日や読売にリークした。
 ところが、事務局で創作した「審査員日当請求書」では9月8〜13日まで一度も審査会議は開かれていないのだ。 「請求書」すら言い訳に合わせて作られていない。
 それに、審査員が本当に存在したら、「何故、急に頻繁に集まらなければならないのか」というだろう。  お粗末な嘘をついたものだ。
 これが顛末だ。
  <最高裁はどうしても小沢氏を刑事被告人にしたかった>
  だから、架空議決という手を考えた。
  うまく進んでいたのに、小沢氏が代表選に出馬し、勝ちそうになってしまった。
  そこで、最高裁と菅陣営は起訴議決を9月14日の代表選開票前に早めた。
架空議決だからできるのだ。
  起訴議決発表以降多くの疑惑が噴出したが、政権与党と最高裁は権力に任せて騙し通そうとしている。
 これが、『最高裁の罠』だ。
 多くの人に『最高裁の罠』を知らせなければならない。
http://civilopinions.main.jp/2013/02/215_1.html   さん より

【 ●海戦では圧勝だが、沖縄が日本から分離していく/佐藤優
 ⇒ 中国は撤退せよ。 ただし損はしないように、一定の利益をあげるよう今から
懸命に励むほか無し。 東南アジアに緊急シフトせよ。 TPP参加なんか捨てよきっぱりとだ。 】
【】●「尖閣沖海戦で日本は勝利できるか」(EJ第3485号)
 中国が国連憲章第53条の「敵国条項」を使って尖閣諸島を軍事的に獲りに来る──そんなことをほとんどの日本人は意識したことはないと思います。しかし、中国は
本気です。 昨年来の習近平氏や楊外相の発言は明らかにそれを念頭に置いています。
 それにしても、なぜいまだに「敵国条項」が存在しているのでしょうか。
日本の外交当局は、なぜこの問題をそのままにしておいたのでしょうか。
 実は日本もドイツも機会を狙っていたのです。 機会とは、1995年、国連創設50周年です。 この年に削除を求める決議案を出そうというわけです。 そして実際に1995年12月の国連総会決議において、日本とドイツが共同提案国になって提出された「敵国条項の削除を求める決議案」が決議されたのです。 しかし憲章の改定には3分の2以上の賛成が必要なために、決議によって条項を死文化することにしたのです。
 それなら、いいじゃないかと思うなかれ、この決議はいつの日か国連憲章を改定するときがあれば、敵国条項を削除するということであって、条文はそのまま残っているのです。 中国はそんなことはまったく気にしないでしょう。 条文が残っていれば、
国益であると称して何でもやってくる国です。
 中西輝政氏は「外交は機先を制すべし」として、次のように政府に対し、警告しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここまであからさまに中国が動いてきた以上、もはや一刻の猶予もない。 事ここに至っては、日本の新政権誕生の直後にもわが国の存立を脅かしかねないこの懸念を明るみに出し、予め警鐘を鳴らす必要があると考えるに至った。外交は機先を制さなければならない。 外務省、政府、そして官邸が一体となつて、早急に敵国条項の実質的空文化を再確認する決議を国連の場で強力に推進し、あわせてアメリカ政府や国際社会に対し、「敵国条項を中国が持ち出す可能性がある。 総会で、撤廃に向けたり強い失効決議に賛成してもらいたい」と働き掛け、「このままでは中国に国連憲章を悪用されることになり、アジアの平和は瓦解する」と広く、そして大きな声で国際世論に訴えるべ
 きだ。 多くの欧米紙に一面広告を出してもいい。 「常任理事国入り」などという幻想を追うのではなく、この条項の削除にこそ、何百億円をつぎ込んでも無駄にはならないはずだ。 繰り返すが、それは日々、日本の存立を脅かし続けているのだから。
     ──「WiLL」/新春超特大号所載中西輝政氏論文
―――――――――――――――――――――――――――――
 果たして安倍は、中西輝政氏の論文に気がついているのでしょうか。 日米首脳会談でも安倍首相はオバマ大統領に直接訴える必要があると思います。
 しかし、果たして中国が敵国条項を盾に戦争を起こしたとき、国際社会がそれを認めるかというと、それはかなり困難であると思われます。 なぜなら、敵国条項を死文化するための決議までしているからです。
 しかし、相手は中国です。 何をしてくるか予断を許さないのです。 いずれにせよ、このような事態になると、尖閣沖海戦がいつ起こっても不思議はないのですが、大事なことは中国から戦いを仕掛けられたとき、最初に戦うのは日本の自衛隊であるというこ
とです。 ここは大事なポイントです。
 なぜなら、尖閣に対して中国から攻撃が加えられたとき、尖閣諸島は日本の領土なのですから、日本が守らなければ、日本の施政権下にあるとはいえないからです。 これを確認してはじめて米軍が動くことになります。 その日本単独で中国と戦うとき、
日本が勝てるかどうかです。 これについてロシアの軍事専門家は、中国が尖閣諸島奪取を図った場合の戦況シミュレーションの結果として、次のように結論づけています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国は膨大な犠牲を出したうえで尖閣諸島に上陸可能だろが、日米安保条約によって出撃する米軍に破れるだろう。 
 ──宮崎正弘著『習近平が仕掛ける尖閣戦争』/並木書房
 島嶼上陸作戦の場合、上陸するのだけが目的ではないのです。
上陸部隊に対して継続して物資を補給するルートを確保しなければならないからです。 これが難しいのです。 当然日本としては、上陸されたら、補給路を断つ作戦に出るからです。そうなると、かぎを握るのは制空権を日中どちらが握るかです。
 これについて、ロシア地政政治学院のカスダンディン・シフコフ第一副院長は、次のように述べています。
 中国は数量で日本を圧倒しており、島を奪取する目的ならば、戦闘機を400から500機出動させ、ディーゼル潜水艦20隻、原子力潜水艦3隻を動員可能。さらに大量のミサイル艦も出動できる。 ところが日本はといえば、戦闘機など150機、ディーゼル潜水艦、護衛艦など数隻であり、兵力は中国の2分の1でしかない。 中国空軍は旧型機が主体で、日本の戦闘機は能力面で決定的に優勢なうえに、中国はAWACS(早期空中警戒機)を欠き、日本側は制空権を確保できるだろうから、数と質の両面を勘案すれば日中の戦力は拮抗している。 中国空軍は戦闘機150機程度が撃墜され、日本側は航空機数10磯が撃墜されるだろう。 したがって米軍が日米安全保障条約にもと
 づき全面介入すれば、中国軍は撃退される。 米国が介入する可能性は極めて高く、中国側は軍事行動に出ることを控えると見られる。 むしろ中国は日本に対して経済制裁などの強い措置をとるだろう。      ──宮崎正弘著の前掲書より
 つまり、こう結論づけているのです。 もし、中国軍が尖閣に上陸すると、大きな犠牲を払うことになり、短期間の局地戦では日本が実質的に勝利するといっているのです。 

しかし、長期的にはもたないことは明らかです。  ―─ [日本の領土/89]
≪画像および関連情報≫
 ●海戦では圧勝だが、沖縄が日本から分離していく/佐藤優
 本誌連載「ニッポン有事!」でおなじみの佐藤優氏は「尖閣を巡る最悪シナリオ」について、特別手記を寄せてくれた。 尖閣諸島をめぐる日中間の最悪シナリオは、武力衝突後における日本の国際的孤立と沖縄の分離傾向の加速化だ。 尖閣諸島周辺の日本領海に中国の漁業監視船などの政府船舶が侵入を繰り返すと、いずれ激しい衝突が起き、軍艦が出動してくることになる。 尖閣沖海戦が起きれば、装備も古く乗員の訓練も
高くない中国のおんぼろ艦隊に対して、わが海上自衛隊は圧勝する。 中国の地上部隊が魚釣島を強襲した場合、本格的な局地戦争になるが、最終的にはわが自衛隊が中国軍を放逐できると思う。 尖閣で敗北した中国軍が、報復で沖縄の嘉手納基地や東京・
市ヶ谷の防衛省をミサイル攻撃し、日中全面戦争に発展する可能性はない。 日中全面戦争になれば、日米安保条約が発動し、米中戦争に発展するからだ。 そうなれば
壊滅的打撃を受けることを中国指導部は認識している。
    ──「アサ芸+(プラス)」  http://www.asagei.com/8500
http://electronic-journal.seesaa.net/article/321921097.html  さん より

【 リーマンショック前の100―110円あたりがひとつの目途になるのではないか。 当面の株高基調を支えるには、十分なレベルだ。 安倍政権がリフレ政策の手を自ら緩めるなどのオウンゴールさえしなければ、2013年はいよいよ日本復活の年になるだろう。⇒ 
天然ガスは、ロシア製もあるのだよ。 TPP参加と引き換えにシェールガス購入は
止めよ。 尖閣で事が始まっても、独力で戦え。 核の脅しがきた場合まだは存続している日米安保条約の履行を米国に迫れ!!! 】
【】円安を容認する米国の地政学的事情=武者陵司
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYE91B01L20130212?feedType=RSS&feedName=jp_column&virtualBrandChannel=13487&utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter&pageNumber=1
 経済は一定の期間は、経済の論理で変動する。しかし、より長期の歴史を考えれば、経済の興隆と衰退を決定してきたのはひとえに政治であり、ことに安全保障を柱とする国家戦略であった。このことは、日本経済の今後の行方を占う上で非常に重要な視点だ。
 筆者は、安倍自民党政権のリフレ政策の背景に、米国の地政学的要請を感じ取っている。 円は11月以降のわずか3カ月間でドルに対して約19%下落した。 本来ならば、米ビッグスリーなどによる円安批判にホワイトハウスが同調し、圧力をかけてきてもおかしくない。 日本の最大の輸出先は、OECD経済協力開発機構)公表の「付加価値ベースの貿易統計」を見れば、中国ではなく依然として米国であり、ドル高・円安の急激な進行による通商上の影響は、米国において大きく発生するからだ。
オバマ政権が本気で圧力をかけてきたら、アベノミクスはひとたまりもない。
 ところが、現時点で、ワシントンから円安批判は全く聞こえてこない。それどころか、2月11日には、円安容認と市場に受け止められかねないアベノミクス支持の言葉が米財務次官の口から飛び出すなど、メルケル独首相を筆頭に、警戒感をあらわにしている欧州諸国や韓国、中国とは対照的なリアクションを見せている。 誰の目から見ても、米国政府の意思がこうした言動に込められていると判断するのが妥当だろう。

 その意思の中身は、たとえば、昨年8月に米シンクタンクのCSIS(戦略国際問題研究所)から発表された報告書、いわゆる「第3次アーミテージ・レポート」からも読み取ることができる。 主な執筆者は、米国の歴代政権に大きな影響力を持つといわれるリチャード・アーミテージ元米国務副長官とジョセフ・ナイ元米国防次官補(現ハーバード大学教授)だ。
 ここでは細かい内容には触れないが、重要なことは報告書の底流に通奏低音のように流れる日本弱体化への警戒感である。 「米国は、日本が強力な米国を必要としているのと同等に、強力な日本を必要としている」との一文を読むだけで、ワシントンの空気が読み取れる。

 折しも、米国では中国異質論が勢いを増している。 現在、中国の経済規模は米国のほぼ半分だが、名目成長率を米国5%、中国15%で、仮に人民元が2割切り上げられるとすれば、ほぼ5年あまりで名目国内総生産(GDP)は米国に肉薄する。
中国のプレゼンス拡大は、市場主義、民主主義、法治主義、財産権、知的所有権などで同国が問題を抱える現状を考えると、世界最大のかく乱要因になりかねず、覇権国・米国にとって許容できるものではあるまい。
 しかも、中国の成長は、日本以上に技術・資本・市場を海外に依存したフリーランチの側面が大きい。 この状況下、日本が長期経済停滞によって漂流し続ければ、特にアジアが大きく不安定化する。 円高デフレによって日本経済がこれ以上弱体化することは、許容しがたいとオバマ政権が考えているとしても、不思議ではない。

<日本封じ込め策としての円高の終焉>
そもそも日本経済は、これまでも米国の政治的利害によって突き動かされてきた。
過去20年間の「日本病」と形容される停滞は、米国の経済圧力によってもたらされたと言っても過言ではない。 強くなりすぎた日本を経済的に封じ込めるプロセスにおいて、異常な円高は決定的な役割を果たした。 大幅経常黒字国の通貨が強くなるのは、変動相場制のもとでは当然である。 しかし、円高の場合、通貨の購買力からみて異常だった。
普通は購買力平価と比べてプラス・マイナス30%程度の為替変動が限度なのに、円の場合は一時2倍という異常な評価が与えられた。 それによって国際水準に対して
日本企業のコストは2倍となり、賃金も2倍となったために、企業は雇用削減、非正規雇用へのシフト、海外移転などを進めた。 この結果、労働コストは大きく低下し、
かろうじて競争力を維持できたものの、日本の労働者の賃金はいわばその犠牲となり、長期にわたって低下し日本にデフレをもたらしてきたのだ。
 ちなみに、多くの経済学者が「実質実効為替レートで見れば歴史的円高ではない」と主張するが、それは因果関係をはき違えた議論だ。 そもそも実質実効為替レートで90年代前半ほど円高になっていないのは、円の名目為替レートがドルなどの主要通貨に対して上昇する一方で、製造業を中心に単位労働コストが相対的に低下したためである。 
 実質実効レートは事後的に均衡したにすぎない。 むしろ、円高が進行したことで、日本の労働者の賃金は、他国に劣らない労働生産性の伸びが続いたにもかかわらず、
大幅に下落してきたと捉えるのが、円高デフレの正しい理解だろう。

 また、長年の円高デフレの心理的副産物なのか、日本経済の問題は需要不足ではなく、労働力減少などに伴う潜在成長率の趨勢的な低下にあるとの悲観論が論壇を中心にはびこっているが、こうした「反成長論」は聞くに堪えない。 改めて言うが、日本の
問題は賃金下落と内需縮小の悪循環だ。 補足するならば、サービス価格のデフレに
よって、ハイテクなどの高生産性セクターから内需系の低生産性セクターへの所得配分のメカニズムが機能しなくなっている点にある。
この解決には、リフレ政策が大いに貢献できる。
 いずれにしても、日本にデフレ宿命論者が増えたことは、米国の日本封じ込めが上手く行ったことの証左とも見て取れる。 今、その米国が日本の弱体化に懸念を示しているのは何とも皮肉なことである。

<株価ターゲットを影の政策目標に>
 さて、米国の地政学的利害が転換する中で登場した安倍政権は、めぐり合わせという意味で、幸運だったと言えよう。
 アベノミクスの要諦は、端的に言えば、市場の想定を超える政策を打ち出し、市場の期待をリードし、人々のアニマルスピリットを鼓舞することにある。 それによって
需要を創造し、経済の好循環を作り出すことだ。 これはまさに、リーマンショック
以降、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が実践してきたことに他ならない。

 成否のカギは、株高の持続にある。 株高がもたらす資産効果は絶大だ。 米国の例でも、資産価格と貯蓄率の連動性は高く、株高は貯蓄率の低下をもたらし消費を刺激する。 日本の政策当局は、円高デフレ脱却策の中心に、株価政策を置くべきだ。インフレターゲットも必要だが、公言せずとも「株価ターゲット」を念頭に置くぐらい大胆な経済政策運営を行ってもらいたい。 株高を支える一の矢、二の矢、三の矢を次々と放ち、ようやく目覚めつつあるリスクテーカーたちの梯子(はしご)を外さないことが重要だ。
 幸い米国は、上記に述べた地政学的事情から、株高を演出している「異常な円高の是正」に当面、水を差すことはないと思われる。 また、そもそも今回の円安局面は、ファンダメンタルズの変化に根ざしている。 2012年、日本は原発稼働停止による化石燃料の輸入増もあり、6.9兆円という過去最大の貿易赤字に転落した。所得収支の黒字で経常収支では黒字が維持されたものの、世界の経常黒字順位では中国、ドイツ、主要石油輸出国に追随する立場になっている。
 加えて、米国では、バーナンキFRB議長に主導された創造的金融緩和策が功を奏して、経済活動もリーマンショック前に戻り、危機の後遺症は着実に癒されている。
金融緩和の出口戦略も語られ始めており、米国の長期金利が上がり始めれば、円安圧力はさらに増すだろう。
 むろん、製造業復権を掲げるオバマ政権にも円安許容の限度はあり、ある水準以上に進めば牽制してくると考えられる。 筆者の読みでは、リーマンショック前の100―110円あたりがひとつの目途になるのではないか。 当面の株高基調を支えるには、十分なレベルだ。 安倍政権がリフレ政策の手を自ら緩めるなどのオウンゴールさえしなければ、2013年はいよいよ日本復活の年になるだろう。
04. 2013年2月12日 23:35:14 : mb0UXcp1ss
 http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51841993.html
2013年02月10日 07:23
日本は不景気なのか
Krugmanがおもしろい記事を書いている。「日本経済は悪い悪いというが、その原因は労働人口が減っていることだ。労働者ひとり当たりのGDPアメリカと比較すると、80年代とそんなに変わらない。2000年代の成長率はアメリカより高い」。

Noah Smithは「なぜ日本はこれほど力強く成長しているのに悲観しているのか?」と問いかけているが、その答はシンプルだ:問題は経済全体のサイズだからである。企業にとっては、売り上げが労働人口比で伸びても意味がない。毎年0.7%ずつ現役世代が減っていく国の活力が乏しくなるのはしょうがない。

問題は、これをどうすべきかということだ。Krugmanの求める財政刺激は、この統計と整合性がない。労働人口比でみると2000年代初めのGDPギャップはほぼ埋まっているから、今は定常状態に近い。したがって「デフレ脱却」なんて意味がなく、金融政策も財政政策も必要ない。必要なのは、まだアメリカに比べて25%ぐらい低い労働生産性を上げる改革(主として労働市場)だけである。

ただ人々が日本経済の実力を実態以上に悲観しているのはよくないので、「日本はそれほど悪くない」と知ることは重要だ。アベノミクスは偽薬だが、「病は気から」だから、偽薬にもそれなりの効果がある。

2013年02月08日 09:59 本
リフレはヤバい
BLOGOSの片岡剛士インタビューが笑える。「インフレと好景気の間には、どのようなメカニズムがあるのでしょうか?」という質問に対して「賃金が緩やかに上昇していくような形にならないと難しいでしょう」と苦しげに答え、「給料が上がるんですか?」という質問には「早くて大体1年〜1年半程度といった所ではないでしょうか」とごまかしている。

これは嘘である。本書も指摘するように、インフレで実質賃金は下がるのだ。インフレは労働者をだまして賃金を下げ、企業収益を上げて景気をよくする、というのがリフレ派の主張だ。しかし吉川洋氏も指摘するように日本の名目賃金は下がっているのだから、インフレにする意味はない。だから「インフレで景気がよくなる」というのも「格差が縮小する」というのも嘘である。インフレは労働者から企業への所得移転によって格差を拡大するのだ。
こういう嘘だらけの議論を政治家が好むのは、不景気を日銀のせいにできるからだ。選挙区で「景気がよくならない」といわれたら「政治はちゃんとやっているが日銀が緩和しないからデフレが止まらない」と言い訳できる。財政政策には金がかかるが、日銀を脅すのはタダだ。TPPに参加すると農協が怒って票が減るが、日銀はいくらたたいても抵抗できない。

彼らは日銀がどうやってインフレを起こすのかは知らない。馬淵澄夫氏は「金利が上がったら設備投資が増える」と信じ、安倍首相は「1万円札を印刷したら政府が9980円もうかる」と信じている。このように政治家にはいつもお札を印刷して財政赤字を埋める誘惑があるから、中央銀行の独立性が保証されているのだ。
 政治家が日銀バッシングをするのは合理的だが、日本の特異性は彼らを応援する自称エコノミストがいることだ。10年以上前に日銀が量的緩和を始めたころは学会でも討論が行なわれたが、いま普通の経済学者でリフレを主張する人はいない。いまだに壊れたレコードのように同じ話を繰り返しているのは、浜田宏一氏のような旧世代のケインジアンと片岡氏のようなアナリストだけだ。

アナリストはインフレが好きである。金融緩和で相場が動くともうかるので、アナリストには(政治家と同じ)インフレバイアスがあるのだ。彼らにとって一番困るのは、物価が安定して相場が動かないことだ。インフレが結果的には金利上昇や財政破綻をもたらすとしても、彼らがその責任を負うわけではないから、アナリストや評論家はつねに「緩和が足りない」と叫び続ける。

本書も指摘するように、リフレ派の議論の最大の欠陥は、どうやってインフレが起こるのかを説明できないことだ。金利はすでにゼロになっているので「期待」に期待するしかないが、期待は実現しなければバブルになって大惨事をもたらす。期待だけでインフレが起こったことなんて一度もない。リフレは笑い話としてはおもしろいが、ヤバいのは政権がまじめにそれを実行しようとしていることだ。
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2013年02月06日 16:33 経済 テクニカル
クルーグマンの原始ケインズ主義
けさのKrugmanのブログがちょっと話題になっている。日本のマスコミは「ノーベル賞受賞者クルーグマン先生がアベノミクスを支持した」とか騒いでいるが、原文を読めばわかるように、彼は金融政策の効果には否定的だ。FRBQEは副作用がなければやったほうがいいが、流動性の罠を脱却しないかぎりきかないので、いま必要なのは財政政策だというのが彼の意見である(テクニカル)。
これは理論的には正しい。現在の状況が定常成長経路から一時的に逸脱していて、総需要を追加して元の経路に復帰できるなら、財政政策は意味がある。ゴルフボールがバンカーに落ちたような状態なら、そこから思い切りボールを打てば元のコースに戻る。問題はそういうコースが存在するのかということだ。

図1 日本の労働者一人当たりGDP

図1のように日本の成長率は、労働者一人当たりでみると、90年代から2007年までの平均成長率は1.2%で、それほど悪くない。Krugmanは財政政策で上の図の緑の破線の水準に戻せるという。これは定常成長経路が不変だという前提にもとづいているが、1998年の信用不安のあと日本はデフレに入り、以前のトレンドには戻っていない。

図2は生産性本部の統計だが、日本の労働生産性は2008年に3.3%も落ち込み、その後5年でそれを取り戻しただけだ。2005〜11年の平均上昇率は0.5%と、大幅に落ち込んでいる。ところが内閣府などの出す潜在GDPは過去のトレンドを単純に延長して図1の緑色のような状態からのGDPギャップを計算するので、「日銀が量的緩和で3%のデフレギャップを埋めるだけで経済は成長する」というリフレ派の信仰が生まれるのだ。

図2 日本の労働生産性
 Cochraneも批判するように、こういうケインズ的モデルはGDPギャップを過大評価し、過大な景気刺激を求めるバイアスがある。日本の場合は、構造的ショックで恒常所得が下がったと考えるのが自然だから、労働生産性上昇率はここ20年の平均の0.9%ぐらいに回復すれば図1の赤線ぐらいに回復する可能性はあるが、もとの成長経路には戻らない。

Rajanも、あれほど大きな金融危機で産業構造は不変だと考えるのが間違っていると指摘している。必要なのは構造不況業種から成長部門へ労働者を再配置する改革であり、生産性が最低の建設業の雇用を増やすアベノミクスが失敗するのは確実だ。
Krugmanの議論は日本のリフレ派に比べれば論理的だが、「政府が需要を追加すれば元の成長経路に戻れる」というのはCochraneやRajanのバカにするold Keynesianである。これはKrugmanのような団塊世代がいまだに昔の成長モデルを信じているという世代的な感覚の違いだろう。日本でも浜田宏一氏は「高度成長時代には数%のインフレが続いていた」というが、今は高度成長時代ではないのだ。

 http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51840923.html
2013年02月04日 10:15 経済
アベノミクスについてのFAQ
私はマスコミ業界では「アンチ・アベノミクス」のコメンテーターという位置づけになったようで、このごろ同じような取材がたくさん来る。ほとんど同じ質問が出てくるので、説明する手間を省くためにメモしておく。この問題についての取材は基本的に受けるが、ここに書いたことぐらい理解してから来てください。

• Q. お金を増やしたらインフレになるのでは?
A. これは一番よくある質問だが、短い答は「そんな簡単な問題だったらとっくにデフレは終わってるでしょ」ということだ。けさのアゴラこども版でも書いたように、2002年からの量的緩和では日銀がマネタリーベースを2倍近くに増やしたのに、物価は上が
らなかった。

• Q. なぜお金が増えても物価が上がらないのか? 
A. これもこども版に書いたように、バナナの値段がゼロになったら、いくらバナナを増やしても売れないのと同じだ。これ以上、金を借りたいと思う人がいないから金利がゼロになるので、日銀券を「押し売り」しても借りる人は増えない。

• Q. 金融緩和したら円安になるのでは?
A. マネタリーベースの変化率と為替レートには相関がない。物価に影響するのは金利であって通貨供給ではないからだ。2010年から日銀は、大規模な「包括緩和」を行なった。これでマネタリーベースが増えたので(リフレ派の貨幣数量説によれば)円は安くなるはずだが、図のように逆にドル安が進んだ。昨年2月に日銀がインフレの「めど」を発表したときは円が下がったが、すぐ戻ってしまった。

マネタリーベースの前年比増加率(青)と為替レート(赤)
 11月後半から始まった安倍氏のリフレ発言で円安が始まったように思われているが、実は図のようにドルやユーロの値上がりは10月から始まっている。これはユーロ危機が一段落したために、リスクオフで円に逃避していた資金が欧米に環流しはじめた――というのが為替トレーダーや経済学者の説明だが、この流れに乗った安倍氏は運がよかった。

• Q. 日銀が国債を買えば長期金利が下がって緩和効果が出るのでは?
A. これは理論的にはありうるが、実際には日米ともにそういうことは起こっていない。ただ日銀が100兆円以上も国債を買っていることが相場を安定させ、国債バブルの原因になっている。邦銀は「金利が上がったら日銀が買い支えてくれる」と安心して国債を大量に購入しているが、これは潜在的なリスクを増大させている。

• Q. 「インフレ期待」を起こせばインフレになるのでは?
A. 為替や株価は相場の予想で動くが、物価は実需がないと動かない。これは80年代のバブルでも2000年代のアメリカの住宅バブルでもみられた特徴で、両者の乖離が大きいときは危険である。予想インフレ率は、物価連動国債の「ブレークイーブン・インフレ率」で知ることができるが、図のように2006(平成18)年までの量的緩和でほとんど上がっていない。

• Q. インフレが2%になるまで緩和して2%になったら止めればいいのでは?
A. ここ14年で平均−0.4%の物価上昇率を2%にするのは、普通の量的緩和では不可能だ。インフレ予想を起こすには、リフレ派のいうように「レジーム・チェンジ」で通貨の信認を毀損するしかない。たとえば日銀が国債を300兆円ぐらい買い占めれば、市場は財政ファイナンスが始まったと考えて国債が暴落し、金利が暴騰してインフレスパイラルが起こるだろう。それが2%で止められるだろうか。

• Q. 財政政策でインフレが起こるのでは?
A. 理論的には起こりうるが、かつての麻生政権で行なわれた91兆円の補正予算でも、景気も物価もほとんど変わらず、政府債務が積み上がっただけだった。これは投資需要が弱いので、公共投資が民間投資の「呼び水」にならないためだ。リーマンショックの直後のように大きなGDPギャップが発生したときは財政政策も意味があるが、今のような長期停滞には役に立たない。

• Q. ではなぜ安倍首相は日銀を脅しているのか?
A. 単に経済学を理解していないだけだと思うが、円安・株高で支持率は上がったし、TPPや規制改革など政治的に厄介な問題を先送りする目くらましとしても便利だ。ただ麻生財務相は金融政策がきかないことを理解しているので、日銀との共同声明はほとんど何もコミットしていない。今のままでは、よくも悪くも何も起こらない。

こども版ゼロ金利って何?  池田 信夫
小学生のみなさんはお金を借りたことがないと思いますが、日本ではお金を借りて新しい仕事をする人が増えないので、デフレが10年以上つづいています。安倍首相は日本銀行に「輪転機をぐるぐる回してもっとお金を刷れ」といっていますが、日銀がお金を印刷したら、デフレは止まるんでしょうか?
 日銀はみなさんに直接お金を貸してくれません。お金を貸してほしいと思ったら銀行に行き、銀行はお金を日銀から借りるのです。このとき、日銀から借りたお金に何%か金利を乗せて返すことになっています。これを政策金利といいますが、今はほとんどゼロです。これをゼロ金利といいます。
 昔は長期金利(10年もの国債などの金利)が8%ということもあったのですが、このごろ会社が金を借りなくなったので、金利が下がったのです。これはちょっとむずかしいと思いますが、景気のいいときは8%の金利で借りても10%の利益が出たらもうかりますが、景気が悪くなって7%しかもうからないと8%で借りる会社はなくなります。借りる会社が減ると金利が下がるのです。
 金利というとわかりにくいので、バナナで考えましょう。1ふさ300円ぐらいしたバナナが、すごい豊作でどんどんお店に並んだとします。いくらバナナの好きな人でも、1日に何十本も食べられないので、バナナの値段は下がります。とうとうバナナが余って値段がゼロになったとしましょう。
 ここでバナナをもっとお店に並べると何がおこるでしょうか。何もおこりません。
バナナの値段がゼロだということは、みんなおなかいっぱいになって「バナナなんか見るのもいやだ」と思っているということなので、いくらタダでも買わないのです。
 同じことが金利にもいえます。金利は「お金の値段」ですから、今のように金利がゼロになっているということは、会社が「もうお金が余って借りる必要はありません」といっているのと同じなのです。ここで日銀が無理やりお金を貸すのを、むずかしいことばで量的緩和というのですが、これはバナナの押し売りみたいなものです。

マネタリーベース(赤)と消費者物価(青)の前年比増加率(%)
 日銀が押し売りしても、借りる人は増えないので、お金は銀行に「ブタ積み」になっています。上の図は日銀の出すお金(マネタリーベース)と物価を比べたものですが、日銀のお金の量(赤い線)がはげしく動いているのに、2000年以降はほとんど物価(青い線)は動いてませんね。ゼロ金利になって、お金が世の中に増えなくなったからです。
 商売をやった人ならわかると思いますが、今「お金が足りなくて商売ができない」という会社はありません。お金はジャブジャブに余っていて、日本の会社の預金は借金より多いのです。問題はもうかる仕事がないことなので、これ以上お金を増やしてもデフレは止まりません。
 安倍さんはお金を貸す側から見ているのでしょうが、借りる立場から見ると日銀と銀行の間でお金がどう動いたって関係ありません。いくらお金があっても、借りる人がいないとお金は動かないのです。たぶんお坊ちゃまの安倍さんも、お金を借りたことがないのだと思います。よい子は、よく知らないことに口を出すのはやめましょう。

関連記事:デフレって何? 
バブルって何?  円安って何?  国債って何?
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013年02月03日 14:00 経済
北欧はなぜ成功したのか
バラマキ補正とインフレ目標に続く「3本目の矢」は、成長戦略だそうである。潜在成長率を上げる政策には意味があるが、経産省の張り切っている「新ターゲティングポリシー」なんて有害無益だ。それより今週のEconomist誌におもしろい特集が出ている。
 アメリカやEUが不況から抜け出せないのに対して、北欧諸国が元気だ。上の図のように一人当たりGDPは世界の上位を占め、成長率も高い。その最大の原因は政府の効率性だ、とEconomist誌はいう。政府への国民の信頼度は高く、「政府を信頼する」と答えた国民の比率は50〜60%とEU平均の2倍近い。
 この一つの原因は政府が小さく、地方分権化されていることだ。人口が最大のスウェーデンでも900万人と大阪府ぐらいで、それがさらに小さな州にわかれて予算の独立性も高いので、国民は「足による投票」で地方政府を選べる。政府予算は公共事業や補助金ではなく所得の直接再分配に使われているので、負担と受益の関係がわかりやすい。
 北欧といえば「高福祉・高負担」というイメージは過去のもので、スウェーデンの政府支出のGDP比は90年代の68%から今は50%以下にまで下がり、政府債務は欧米よりはるかに小さく、「経済的自由指数」でも英米とほぼ同じになっている。
 北欧諸国に特徴的なのは、企業に対する補助金や解雇規制がほとんどない代わり、個人のセーフティネットが手厚いことだ。経営の悪化した企業は守らないで破綻させるが、失業者には職業訓練をほどこし、それを条件として手厚い失業手当を出す。産業別労組の組織率が高く再就職が容易なので、企業の破綻は多いが長期失業率は低い。労働者が失業を恐れないので、90年代の金融危機で自殺率は下がった。
 このように企業の新陳代謝を進めて労働人口の移動をうながしたことが北欧の成功の原因だ、という点で多くの経済学者の意見は一致している。北欧の政府は、産業の中心が製造業からサービス業に変わるのに対応して産業構造の転換を促進し、エリクソン、イケア、H&Mといった新しい企業が成長し、知識集約型の産業に移行した。

日本政府の「成長戦略」は、これとは真逆である。ゾンビ企業を延命する一方で、個人に対するセーフティネット生活保護ぐらいしかない。補助金などの形で間接的に所得補償をしているため、そのほとんどは農協などに中間搾取されてしまう。何より有害なのは、ゾンビ企業が優秀な労働者をロックインして新しい分野への挑戦を阻害していることだ。
 幸か不幸か、こうした企業に依存した「日本型福祉社会」は限界に来ており、そう長く維持できない。政府が裁量的な介入から撤退して企業の保護や規制をやめ、個人ベースの福祉社会に移行することが最善の成長戦略である。
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2013年02月02日 14:48 経済 テクニカル
ゾンビ企業と破滅のオプション
アゴラで紹介した星=カシャップの「ゾンビ理論」には批判もあるが、日本経済のメタファーとしてはおもしろいので、これをタレブのアンチフラジャイル理論で考えてみた。
タレブが日本からヒントを得たことでもわかるように、安倍政権に代表される厄介な問題の先送りは、日本の政治と経済に共通の特徴である。欧米の金融危機の後処理の失敗も同じ原因で起きているので、日本独特というわけではないが、それが20年以上の長期にわたるのは特異である。
 それをタレブはオプション性という概念で説明する。これは金融のコール・オプションのように、小さな失敗のコストを負担する代わりに大きな成功の利益を得るしくみだ。ここでは変化が大きくなればなるほど利益も大きくなるので、そこから利益を得るイノベーションが重要になる。
 たとえばスティーブ・ジョブズのプロジェクトは、ハードウェアとソフトウェアが切り離されてモジュール化されているので、自分のつくりたいものをつくって失敗とわかるとすぐ撤退し、うまく行ったプロジェクトに資金を集中する。これによって図の上のようにペイオフは凸関数になる。これがイノベーションを生むしくみだ。
 これに対して日本の企業のようにすべてのプロジェクトが相互補完的に組み合わさっていると、図の下のように凹関数になり、小さな利益を上げる代わりに大きな損失を抱えてしまう。プロジェクトは互いに密結合しているので、一部をやめることができず、その損失を他の利益で補填することで全体の効率が低下し、90年代の日本企業や2000  

 年代の金融商品のように雪ダルマ式に損失がふくらむのだ。ここでも先送りはオプション価値を増やすのだが、それは破滅を拡大する逆オプション価値である。
 このような非線形性は社会現象の本質的な特徴なので、それを線形の均衡理論で近似しようとするマクロ経済学の予想はつねにはずれる。競争に勝つのはオプション性を利用するイノベーターであり、負けるのは「もしかすると地価が戻るのではないか」というオプションに賭けてゾンビ企業に追い貸しする銀行である。
「モジュール化がオプション価値を生み出す」という話はBaldwin-Clarkのコンセプトで、拙著『ムーアの法則が世界を変える』でも紹介した。藤本隆宏氏などはこれを「組み合わせ」と矮小化して日本企業の「すり合わせ」と対照しているが、それは大きな間違いである。系列企業が「一家」になった日本企業は凹関数の逆オプション価値を拡大し、本質的なイノベーションを抑止しているのだ。

日本では企業も政治も互いに密結合しているので、逆オプション価値は極大化する。かつては政権交代すれば日本経済は回復する(かもしれない)というオプションが先送りの言い訳だったが、今度は日銀が輪転機をぐるぐる回せば回復する(かもしれない)という幻想に置き換わった。タレブも指摘するように、組織が複雑化するほど「一発逆転」に賭けて先送りする傾向が強まり、負けが込むほど賭け金が大きくなる。
 ねばった結果、奇蹟が起こって回復する可能性も論理的にはあるが、普通は最後にちょっとした偶然ですべてが崩壊する。そのきっかけが何かは予想できないが、起こることは確実なので、ブラック・スワンは「想定外」の出来事ではない。アベノミクスは、破滅の賭け金を一段と大きくした笑劇として、歴史に記憶されるだろう。

 2013年01月15日 13:56 経済
もう貿易立国には戻れない
きょうは久々にドルが1円以上も下げて88円台になった。甘利経済再生相の「過度な円安になれば輸入物価にはねかえって国民生活にはマイナスの影響も出てくる」という発言が利食い売りのgood excuseになったようだが、すぐ89円台に戻した。

ドル/円の名目為替レート(緑)と実質実効為替レート(赤)
 某外銀のファンドマネジャーによると「現在のドル円レートは当社の予想レンジの
上限をすでに突破した」とのことだが、上の図のように実質実効為替レートでみると、2008年まで毎年ほぼ3%ずつ下げていた円が金融危機の影響で跳ね上がり、過大評価されている。 次期日銀総裁の候補とも目される岩田一政氏によれば「1ドル=95円が適正レート」だとのことだが、これは実質実効レートのトレンドを延長すれば出てくる(それでもまだ過大評価)。
 現状の円レートは貿易財の購買力平価や日米の金利差で見ると過小評価だが、右の図のように経常収支が赤字になったことを考えると、長期的には円が弱くなる傾向は変わらないだろう。素直に実質実効レートのトレンドを延長すると、あと2割ぐらい下げても驚かない。
 安倍は、こうしたトレンドの反転の時期に出て来た「時の氏神」である。彼の願望どおり1ドル=100円は不可能ではない。 甘利は100円以下のレートは許容しない(逆にそこまでは許容する)と発言したが、そこで止めることができるかどうかはわからない。ドル売り介入をするとしても、数兆円が限界だろう。 世界の外為市場で動く資金は1日5兆ドルを超えるので、相場が大きく動いたら政府の介入では円の暴落は止まらない。
 要するに日本は貿易立国の時代を過ぎ、貿易赤字を所得収支の黒字(金利・配当収入)で補う「年金生活者」になったのだ。 日本の長期停滞は、円安で解決するような簡単な問題ではない。 これから大事なのは、もう余り増えない資産の価値を守ることだが、いまだに高度成長の夢を忘れられない政治家とマスコミが円の目減りを喜んでいるのは救いがたい。

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05. 2013年2月13日 00:28:46 : mb0UXcp1ss
2013年02月12日
第48回 ビッグマック指数からみると円安は行き過ぎの水準に?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】
先週8日、麻生財務相が「我々が意図しないくらいに〜」といった表現でこのところの急速な円安に言及したことで、ドル/円相場が円高に振れる局面がありました。この2ヶ月あまりで15円近くも円安進行となっているドル/円相場、麻生財務大臣にとってもこのスピードは想定を超えるものだったということでしょうか。これを受けて「日本当局は90〜95円くらいが満足な水準なのであり、市場もそれを徐々に理解するだろう」「日本の姿勢が変化している兆しがあるなら市場は小休止することになろう」といった見方も浮上してきています。果たして日本にとってどの水準が満足なのか、浜田宏一内閣官房参与は100円くらいがちょうどいい、と発言しているのですから100円到達は想定内かと考えてもいいと思いますが、問題はそのスピードなのでしょう。しかし本当に100円くらいがちょうどいいのでしょうか?これは海外から見ても許容できる水準なのでしょうか。
 英経済誌エコノミストは8日、世界中で売られているマクドナルドのハンバーガー「ビッグマック」の値段をドルベースで比較しどの国の通貨が割安か割高かを見る「ビッグマック指数」の最新値を公表しました。これは為替の適性水準は基本的に「モノの値段」で決まるとした考えに基づいていたものです。仮にアメリカのビッグマックが1個1ドルだった時に、日本のビッグマックが1個90円だった場合、同じ物の値段ですから1ドルと90円は同じだということになりますね。これは購買力平価といって、為替レートは自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって決定されるという考え方なのですが、実際の為替レートは購買力の他にも様々な要因によって影響されて動く為、実際の市場は購買力平価から大きく乖離して動くこともあります。しかし、中長期的に大きく乖離した状態が続くことは難しいと考えられており、価格と為替レートは長期的に調整が進み、いずれは同じ貿易財の入った買い物かごが世界中で同一価格になっていくとされています。つまり現状において物価の高い国の通貨は長期的に下落し、物価が低い国の通貨は長期的に上昇するという考え方です。
 この最新のビッグマック指数によると、日本の円はドルに対し20%近くも割安だという結果となりました。中心値となる米国のビッグマックの価格が4.37ドルなのに対し、日本は3.51ドルで、19.7%も安かったのです。確かに昨年11月から2ヶ月あまりで15円近くも円安が進みましたが、これはこれまで長きに渡って円高に苦しんだ分の「水準訂正」の範囲ではないのでしょうか?!歴史的円高水準の70円台にあったドル円相場が90円台に水準訂正が行われたくらいでドルより20%も割安だというのは腑に落ちないのですが...。

実は戦後の円の最高値をつけた2011年の1ドル=75.35円、この時は1%の割安にまで米国との格差が縮小していました。つまりビッグマック指数から換算すると70円台の水準が円相場の適正水準である、ということになります。輸出企業が赤字に苦しんだ70円台が適正水準だというビッグマック指数が正しいとは思えませんが、ただ、これまでも購買力平価を材料に日本には円高圧力がかけられてきた経緯があるため無視はできないのです...。今週15〜16日にモスクワでG20財務相中央銀行総裁会議が開催されます。日本の当局者は、日本の新たな金融・財政政策と円安について議論がある可能性はあるものの、競争的な通貨切り下げを行っているとして日本への風当たりが強まる状況には至らないだろうとしています。しかし、ドイツやロシアの中央銀行からは通貨切り下げ競争が起きる危険性があるとして苦言を呈されており、もしG20で円安について批判が集中するようなことがあれば、ドル/円相場も一時的には大きく動く可能性があることに留意しておきたいところです。
 コラム執筆:大橋ひろこ
  フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。
コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
 http://www.asyura2.com/13/hasan79/msg/235.html  さん より